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第18話 富士登山、いつに無い不思議体験|データベースシステムのデジログ/digilog

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第18話 富士登山、いつに無い不思議体験

私は、2004年から毎年富士山に登ってきた。(第3話)
それが、昨年は10月まで全く休みが取れず、やむ無く断念した。
そして、今年もタイミング悪く、たまたま様々な行事が重なり、更に予想外の出張も入りスケジュール調整に苦慮していたところ、今週の土曜日(8月18日)の予定が延期になった。
チャンス到来か。
しかし、17日(金)は会合があり帰宅も遅い。
また、19日(日)は午後4時からお客様のパーティーに参加する予定がある。
富士山に安全に登るのには、やはり強行軍である。

土曜日の午前中に買い出しと準備、現地まで車で約3時間半。夕方から夜にかけて登山開始で、登頂が深夜。すると真夜中に下山することになる。すなわち、夜通し歩いて朝方に下山終了と、今まで一度も経験の無いパターンである。
しかし、そこまで考えている時点で既に気持ちは固まっている。
あとは最も重要な天候であるが、現地予報を確認すると
「曇り、大気の状態が不安定で、一時的な豪雨・落雷に注意」、
しかし「日曜日は天候が回復する見通し」
微妙である。なにせ土曜の深夜から日曜日にかけて登るのだから。
以前に一度、富士山で突然の落雷を経験したが、とても恐ろしいものであった。
無理は禁物!
まあ、まずは現地に行き、その時の状況で判断することにしよう。

18日(土)、11時に近くのホームセンターで、予備用のスポットライト、電池、
そして、このところ下山で膝を痛めるパターンが続き、杖が2本必要である、
1本購入する。
コンビニで、飲み物、おにぎり、飴、チョコレートを仕入れて、いざ出発。
中央道を下り大月から河口湖を目指す。普通であればここらで雄大な富士山が目の前に広がるのであるが、厚い雲に覆われ全く見えない。17時をまわる頃、東富士五湖道路に入りる辺りで、周囲が暗くなりはじめ、ポツリポツリと大粒の雨が落ちてきた。案の定の「豪雨」である。
「ふじあざみライン」の入り口で「交通規制」があったため、ふもとの駐車場に止めて天候の回復を待つことに。8時40分頃、雲が薄く切れ始め、雨も小降りになってきた。空を見上げる、天候回復の兆し!
はやる気持ちを抑えつつ着替え、準備を開始。
19時半のバスに乗り登山口へ。

20:00、登山開始。こんな時間でも結構登山者がいるものである。
    マイペースをキープするよう心がけよう。
21:10、6合目到着。ところどころに薄い雲が残るが、星空が見える。
    ここで、Tシャツから長そでのインナーに着替える。
21:50、本6合目(2620m)到着。
    この間は、一人の登山者も会わなかった。
    立ったままおにぎりを1つ食べる。
    あと約1,000mで頂上、まだ先は長い。
    既に低層の雲は眼下に、空を見上げると、
    あらら、うっすらと雲が星空を覆いつつある。
22:45、7合目到着。かなり気温が下がってきた。
    インナーを着替え、ウインドブレーカーを羽織る。
    20分ほど休憩、おにぎりとチョコレートをほおばる。
    体調は問題無いが、膝の裏側に少し違和感がはしる。
23:28、本7合目到着、3,200m地点。
    ここは休憩無しで、そのまま上を目指す。
    気になった天候はすっかり回復し、
    (これ以降下山するまで、雲一つ無い状態が続いた)
23:54、8号目到着。ここで10分休憩。
    数年前、この先から登山者の渋滞が発生していた。
    手袋はしているものの、既に指先は麻痺してきた。
0:22、本8合目到着、3,370m地点。
    ここからは「吉田ルート」と合流するため一気に人が増える。
    かなり寒さが身に応えるが、風が微風であるため、
    このままウィンドブレーカーのみで登ることに。
    山小屋の「トン汁」か「肉まん」で体を暖めたいところであるが、
    渋滞を避けたい気持ちが勝り、早々に頂上を目指す。

思った程の渋滞は無いものの、やはりかなりの賑わいである。
ことさら、ゆっくり、膝に負担をかけないように登る。
次の、八合五勺も九合目の紛らわしい鳥居も素通りし、
最後の難所にかかる。
ここからはフルに四肢を使い、
もがくように、這いつくばるように登る。
1:42、登頂。いつ来てもこの達成感は格別である。
   ここから、下界の街の明かりを見下ろす眺めは絶景である。
   遮るものが何も無い空は、星座がわからないほどの無数の星を
   広い範囲で観ることができる。
   今日はこの天候のお蔭で、ここに来るまでも、
   いくつもの「流れ星」を確認することができた。

ことさら、ゆっくり時間を掛けて登ったためか、前回程の葛藤も無くいい意味で集中できた登山だった。また、気温が4°と真冬並みの寒さであるが、風がほとんど無いため我慢できるレベルである。周りの登頂者達は、寝袋にくるまり仮眠する者、防寒シートに身をくるむ者など、恐らくここで日の出を待つのであろうが、私は元よりご来光が目的では無いので、さっさと下山の準備にとりかかる。なにせ、このところ私にとっては下りの方の不安が大きい。真っ暗な中での下山も初めてであり、足元が見えないリスクも考慮し、普段の倍の時間を見積もっている。
もう一点気を付けることは、ルートを間違えないることである。殆ど似たような風景が続き、途中、登山道とも交差し、また吉田ルートにも分岐するため、日中でも迷うことがあった。
しかし、下山が嬉しいのは、コンディションが好転していくことである。
下る都度気温も上がり、頭痛や吐き気(軽い高山病)、息苦しさも下った分だけ楽になる。

2:00、下山開始。
下山ルートの名物の「砂走り」も、昨日の大雨の影響からか湿っているため、私にとってはありがたい。
どうしても、速くなりがちなスピードを抑え、足元を照らし出すスポットライトの明かりに集中し、一歩一歩踏みしめながら下る。私以外、誰一人として下山をする者はいない。この時間であれば当然であろうが、少々不安になり一度引換し道標で下山道と再確認する。ここで間違えたらたまらない。

2時半を過ぎた頃、遠くから大きな歓声があがる。
私は、ひたすら足元の明かりのみを見て下っている最中であったが、足を止めて空を見上げると、
まるで打上げ花火のような大きな火花がゆっくり流れていくのを確認。普通の「流れ星」は、ほんの一瞬流れるだけであるが、大きさも、明るさも桁違いで、それもゆっくり流れる様は圧巻であった。
(そもそも、これ「流れ星」?)
そんな天体ショーから間もなく、いくつもスポットライトの明かりが登ってくるのを確認。明らかにここは下山道のはず。なるほど、そろそろ通常の登山道の渋滞が始まっているため、下山道から山頂を目指すようである。今日の湿った状態であれば、さほど歩きにくくは無いであろう。
そんな、グループといくつかすれ違い、そのうち皆が連なり長い行列に。深夜のこの時間、真っ暗闇の中スポットライトを頭に付け、皆無言で黙々と歩く大行列、それを私一人だけが反対方向に向かい歩く。何とも形容しがたい、この世のものとは思えぬ異様な光景であった。(逆から見れば私の方が異様に映ったかもしれない)
ただ、あちらの行列には決して加わりたく無いと思った。

8合目を過ぎ、大行列からも離れ、また孤独な一人旅が始まりしばらくして左の膝の裏側に痛みが走りだす。これだけ気を付けて膝をかばい、特に下りも一歩一歩慎重に歩いてきたにもかかわらず・・・。覚悟はしていたが、まだ早すぎる。果たして最後まで膝がもつであろうか?さらに、一歩ずつ、じわっと砂に足を埋め込むように下る。
7合目を過ぎた辺り、登山道からも遠く離れ自分以外に「生き物」の気配が全く無い。後3時間もすれば、ここも多くの人が通ることであろうが、今は虫の音すらない私一人だけの世界。圧倒的で雄大な富士山の中で、しばらく孤独を、自分のちっぽけさを味わってやろう。少し荒目の砂礫に体を横たえ、ライトを消してみる。暗闇と静寂が私を包み込む。
夜通し歩き続け、肉体的にも疲れているであろうが、眠気も疲労感も全く無く、何故か足の痛みも感じない。それどころか、何故か身体が軽くなったような感じさえする。そんなふわふわした不思議な感覚に30~40分ほど浸っていたであろうか。ふと寒さで我に返った。時計を見ると3時52分。そろそろ東の空が白み始めている。
今日の日の出は4時55分頃、この天気ならさぞ素晴らしいご来光が拝めるはず。
それを楽しみに下山を開始。
膝の痛みは、すっかり消えていようはずもなく、両手に2本杖を駆使し慎重に下る。

もう少しで5時になろうとする頃、遠く地平線の彼方の雲間から、太陽が顔を出した。足を止め、ご来光に手を合わせる。やはり、暗闇より明るいほうがいい。一気に、身体中に気力がみなぎる。

東の空の雲海がオレンジに染まり始める

6:42、無事に下山。
杖を2本使い、通常3時間程で下る道を約5時間かけて下りて来たが、膝は両足ともボロボロだった。この足以外は全て順調で、いつに無い不思議体験もあり、2年振りの富士登山を満喫してきました。
次回は杖を3本用意するようか・・・。(本数の問題では無い)

日付2012/08/20

投稿者半澤 透

ブログ-四方山話-



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