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第5話 募集要項 「生命保険完備」?|データベースシステムのデジログ/digilog

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第5話 募集要項 「生命保険完備」?

会社の求人では職種、勤務地、年収の他、ほとんど、「社会保険」について記されている。
「社会保険制度完備」とは、一般的に「健康保険」「厚生年金保険」「労働者災害保険」「雇用保険」の4種の保険制度に加入していることを意味している。
思い返せば、私の就職活動時代は必ずしもこの4つの制度が完備されていることにそれ程のこだわりはなかったような気がする。(時代が違う?)

昨年末の新人採用の個人面接時、一通りの説明及び質疑応答も終わりに近づいたころ、
「最後にひとつ、保険制度についてお伺いいたします」
社会保険制度については既に説明したはずであるが、
   「生命保険の制度はあるのでしょうか?」
「・・・?」
退職慰労金の原資に繰り入れるための「養老保険」を検討したことはあったが、そのタイプのものを想定しての質問か?
「何を補償したいとの考えからですか?」の質問に対して、
   「あのぉ、私の万が一に備えての・・・」
「現在会社では、先に説明した4つの保険制度のみですが・・・。」

似たような質問がつい先日あった。
若手社員を連れてマニラに出張に行くことになった際、その社員から
「あのぉ、私の生命保険って何か加入しているのでしょうか?」
全く私の意識になかった質問に、正直ビックリ!
今までも、社員を連れて海外出張は何度もあったが、「生命保険」などと気にもしたことがなかった。
まず、ひとつめに、
たしかに、マニラは日本に比べ犯罪発生率が高いことは事実である。
しかし、紛争地域に行くのであるならまだしも、普通のビジネスに、普通の都市(?)に、それも私と一緒に行くというのに、「生命の危険」を感じているということか。
そしてなによりも、
何の為の保険なのか、何を補償したいのか、そして誰のための保険なのか?
そのことを、改めて考えさせられた。

ようは、我が若手社員
「とても危ないところに出張に行くので、もし自分に何かあった時のホショウはありますか?」
と、言いたかったのであろう。
ともかくは「とても危ないところ」の認識を払拭する必要があり、まずは現地を知るため、市販のガイドブックを読むこと、そして、外務省の「海外安全ホームページ」をチェックすることを勧めた。
現地では、一人で勝手に出歩かないこと、派手な装飾品を身に着けないことなど、私の経験談も話した。
そして、「ホショウ」について、
海外出張中であっても労災保険の適用が受けられること、
国内外を問わず、業務上発生したいかなる損害についても会社が責任をもって補償することを説明。
しかし、イメージ的に「労災」ではなく「生命保険」のホショウを意識しているらしいが、結果、一般的に危険な地域ではないことを認識し、「生命保険」の加入が無いことも理解できた模様。

ここで、「生命保険」(いわゆる死亡保険)について一考する。
そもそも「生命保険」とはなにか?
人間の命に関する損失を保障することを目的とする保険であること。これに病気や事故に対する補償を特約できるタイプの保険、であると認識している。
すなわち「自分にもしもの事があったら」、その遺族や残された人たち対して、その損失を保障するものであり、当然ながら本人自身に対するリスクがヘッジされるものではない。
先の採用面談に来た者も、当社若手社員も、恐らくは、
「あなたも社会人になるのだから、生命保険でも入ったら」
「海外の危険なところに行くの?生命保険は入っているの?」
等のアドバイスや情報により、「保険」の本質を誤解していたのであろうか。
危険における予防や対策は、もちろん幾重にもなされるべきことで、考えられるリスクをヘッジすることは、とても重要であることは言うまでもない。
しかし生命保険は、その起きた結果に対して保障するものであり、その「危険」自体に対して、何等の安心を与えられるものでは、到底ないのである。
そして、会社が加入する生命保険に関して、「万が一」の場合の受取人は、原則として会社である。
これは、個人についても同様なことがいえる。
本人に「万が一」のことがあれば、その保険金の受取人は家族やそれに準ずる他人である。
しかるに、前述の「本人たち」は、その若さで、その受取人のために保険の加入を考えているのであろうか?
(そんなことはあるまい)

私は会社で、自身に対する生命保険に加入している。
どこの経営者も同じであろうが、それは、もしも自分が「万が一」の場合に、会社経営を不安定にせず、従業員やお取引様に極力問題が無いようにすることが目的であり、そのための保障を会社にするものである。
よって保険金の受取人は会社である。
したがって、会社がその従業員に対し「生命保険」に加入するということは、福利厚生の観点からよりも、実際に発生しうるリスクに対して会社を、または経営を守ることが主目的であるといえる。(税制上の観点から考慮しても)
*前述の養老保険を除く

数年前にもニュースで世間を騒がせた、会社による「保険金詐取」事件。
会社が社員に「生命保険」をかけて、その社員を死に追いやり多額の保険金を受け取る怖~い事件である。
個人の「生命保険」に対して赤の他人が受取人にはなり難いが、会社と従業員という関係においては、容易に保険の加入ができるシステムを悪用したものに他ならない。
今後、会社の募集要項に「生命保険完備」とのうたい文句が出てくる日もあり得ることか!?
しかし、その本来の目的や意図を理解しないと、
逆に、とても恐ろしい制度になってしまう可能性もあり得る???

日付2011/03/03

投稿者半澤 透

ブログ-四方山話-



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